久井町江木地区でホタルの保護活動をしている米持さん。活動をはじめたきっかけは、御調中央小学校の校長として勤めていた平成16年(2004年)までさかのぼります。
当時、学校区内を流れる江国川には毎年多くのゲンジボタルが見られました。ところが、近くで高速道路の建設が決まり、ゲンジボタルの生息地への影響が心配されたため、川のホタルを保護してほしいという地域住民の声がありました。そこで、道路公団、学校、地域住民と連携してホタルの保護活動をすることになったそうです。
5年に及ぶ大プロジェクト
平成16年には各協力団体など四か所でホタルの捕獲と飼育、繁殖して放流することが出来ましたが、高速道路の関連工事は5年という長い期間で行われます。その間は川へホタルの幼虫を放流するだけではなく、学校敷地内でもホタルが自然繁殖するようなビオトープを作って飼育、放流するのが適切であるという意見があり、専門家の指導のもとに校内に※ビオトープ作ることに。
※このビオトープはゲンジボタルの保護と育成を大きな使命にしていますが、他の小動物や魚も棲みついて、多くの樹木が葉を繁らせ、子どもたちの憩いと学習の場となることも大きな目標です。(-小冊子 夢いっぱいのビオトープより引用)
ビオトープとは、ドイツ語でBio=生き物、Top=場所という意味で、様々な生き物が人間と共生できる場所のこと。『夢いっぱいのビオトープ』と名付けられたこの事業は、学校の総合学習の時間を利用して子どもたちが主体となって始まりました。まずはホタルの観察から、捕獲、周りの川の生き物や、水質の調査をはじめました。ビオトープ作りでは石や木材の搬入、小川づくりなど大人の力が必要な作業もあり、PTAや道路公団に建設会社、森林組合、地域住民と多くの力をかりて『夢いっぱいのビオトープ』を実現することが出来たそうです。
ホタルマップの制作
その後、定年退職して奥様の故郷である久井町江木地区に暮らしていた米持さんは、地元久井町の環境保護の活動をはじめます。ホタルや魚のすめる水辺の再生に取り組むため、まずは久井町でもホタルがみられるかどうかを調べてみることにしました。ホタルマップの制作は仲間とともに、町内全世帯に調査を呼びかけ、5月末~7月中旬にかけて参加してもらいました。平成22年(2010年)の調査は延べ66人が参加し、久井町内でゲンジボタルは24ヶ所、ヘイケボタルは13ヶ所で確認することが出来ました。「ホタルマップを作る前は久井町にはホタルがいないと思っている人が多かったのですが、調査の結果、見られるところがけっこうあったんです。久井の通説が覆った瞬間でした 笑」と米持さん。
川辺で光る蛍は世界の中では珍しい!?
日本ではホタルといえば川辺で光る幻想的で綺麗な虫のイメージがありますが、実は世界中にいるホタルの仲間、約二千種類のうち、水辺に生息する光るホタルは十種類しかいないのだとか。「その十種類のうち三種類は日本にいるゲンジボタルとヘイケボタル、それから沖縄県に生息する久米島ホタルです。日本ではきれいだね、と観賞されているホタルですが、海外ではファイアバグと呼ばれて気持ち悪がられているところもあるんですよ」日本のホタルってそんなに珍しいものだったんですね。そんな雑学満載のお話をパワーポイントも使って詳しく説明してくれた米持さん。
聞くと地元の小学校や放課後こども教室で子供たちにもホタルの生態講座をしているそうです。
「子どもたちにはホタルを入口にして、色んな虫や生き物に興味をもってもらいたいですね。今の子どもたちを見ていると、近所の自然に触れる機会が少なくなっているように思います。是非いろんな生き物に興味を持って欲しいですし、自分で花を育てたり生き物を育てたりという体験を大事にしてほしいですね。」と語られます。生態講座で学んだ子供たちからは、ホタルの知らない事を知れて面白かった!とたくさんの感想が来ていました。
ホタルが食べるカワニナの生態
実は、自宅でホタルの飼育もしていて1月には繁殖したホタルの放流もしているそうで、「飼育のために餌となるカワニナも育てているのですが、ホタルの餌となるカワニナも面白いんです。カワニナは珪藻(けいそう)を食べて成長します。他にも良い食べ物があるんじゃあないかと、色んな食べ物を試した結果、一番良く食べるのは鯉の餌! 試してみて意外だったのは、メロンでした。なぜかメロンを入れたらすごく食べたんですよ。」と話されます。「昔から植物や生き物が好き」という米持さん。お話をする様子が生き生きとしていて、本当に生き物が好きなんだなあ、と感じました。
ホタルの鑑賞シーズンは?
ホタルの鑑賞シーズンは5月末~7月頃。米持さんの家の近所もホタルの観賞スポットで、その時期になると、夜の散歩がてらその日の天候やホタルの数を調べているそうです。
「ホタルが見られる時間は夜の8時頃から2時間ぐらいです。集団明減活動といって、ホタルが一斉に光ることがあります。ふわーり、ふわーりと光る様子は風情がありますよ。ホタルが光るのは雄と雌が出会うためです。邪魔をしないようにホタルがいる場所には車のライト等の光をあてないように気をつけて鑑賞してくださいね」
シーズン前の5月には町内の仲間たちと鑑賞場所の草を刈ったり、蛍を見に来た人が川に落ちないようにロープを張ったりして対策もしています。「豪雨災害やその復旧工事の影響でホタルの数が少ない年もありましたが、今年は4年ぶりに地元の子供たちでホタルの話や観賞を行なう、ホタル祭りも開催する予定です。」と話されました。
久井町のホタルを見に行く際はぜひ参考にしてください。
画像広報みはら2023年5月号「三原の盛り人」掲載