開催時期 例年2月11日(祝)
特徴 恵方と逆の方角に設置した的に弓を射ることで邪を払い、1年の無事と豊年を祈願する行事
須波港から瀬戸田行きのフェリーに揺られて20分。佐木島の南西部にある向田港に着くと、すぐに広島県文化財にも指定されている磨崖和霊石地蔵(まがいわれいしじぞう)が見えます。
それを右手に見ながら、道路のお地蔵さんを辿っていくと、向田地区の亀山八幡神社(かめやまはちまんじんじゃ)があります。
亀山八幡神社は弘安(こうあん)10年(1287年)に京都の石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)より御分霊(ごぶんれい)を勧請(かんじょう)して祀ったのが始まり。毎年2月11日の祝日に開催される御弓神事(おゆみしんじ)は三原市の無形民俗文化財にも指定されています。
画像芸予諸島に見られる厄払いの神事
弓を使った祈祷は、広島県、香川県、愛媛県の沿岸部の神社に多く見られる神事で、佐木島にある亀山八幡神社もその一つ。御弓神事では、1メートル四方の大的と、その横に直径40センチの小的を用意します。
的の位置は毎年異なり、その年の恵方と逆の方角に的を設置して、これを射ることで邪を祓い、豊年と一年の無事を祈るのだとか。
「矢を射ることは、その年の厄払いの意味合いがあるので、的は絶対にはずせません。練習もしますし、その日は相当なプレッシャーですよ。」
そう話すのは亀山八幡神社の宮司になって15年の山田 修さん(写真中)。以前は糸碕神社で20年務められていたそうです。宮司の山田さんが射るのは小的で、その後、大的に総代、世話役、頭屋の順に射ち、一般参拝者も矢を射ることが出来ます。
神社の竹で作った手作りの矢
弓で射る矢とは別に、その年一年のお守りに、神社にある竹林の竹を使った矢も配られます。この矢は毎年交代制で神社の祭事のお世話をする頭屋(とうや)が一本一本手作りしています。祈祷(きとう)された矢は参拝者が持ち帰り、一年間家で飾られたあと、節分祭で神社に返して焼納し、また御弓神事で新しいものをもらいます。
地域に根ざした神社
実は向田地区は神道の家が多く、地域の冠婚葬祭も亀山八幡神社が担っているのだとか。それは、向田の庄屋だった西原庄蔵氏が、維新後の神仏分離の流れの中、率先して村内に神道を広め、神社を改築したことも理由の一つ。
西原庄蔵(にしはらしょぞう)は、1832年に佐木島の西にある割石島(わりいしじま)との間の干拓に着工し、1834年には扇浜塩田(おうぎはまえんでん)を完成させるなど、多くの偉業をなした人物で、その功績に対し神社境内に西原庄蔵翁頌徳碑(にしはらしょうぞうおうしょうとくひ)が建てられており、毎年10月に「頌徳祭(しょうとくさい)」が行われています。そんな歴史のある亀山八幡神社は地域に根ざした神社として愛されています。
広報みはら2022年1月号「未来へつなぐ大切な祭」掲載