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釜で沸かした湯を奉納し、無病息災を祈る行事 沼田神社 湯立て祭

開催時期:3月の第1日曜日
特徴:風・水・火の釜で沸かした湯を奉納し、無病息災を祈る行事

沼田神社は859年創建の『正一位 渟田宮』の名を冠する歴史の古い神社です。石碑には「むか~しむかし、真人(まびと)という人が疫病(えきびょう)の流行を嘆(なげ)いていると、素戔嗚尊(スサノオノミコト)が現れて「ほこらを建てて自分をまつれば、疫病や災難から人々を守りましょう」と言って立ち去った」と、創建の話として刻まれています。

沼田神社 湯立て祭

湯立て祭は、地元で『祇園さん』と呼ばれて親しまれている沼田神社のお祭りで、祭りには風・水・火の意味がある3つの釜が使われます。沼田神社の資料には『水は清浄(せいじょう)に見へても火の神と風の力で燃やして最も清浄にたぎる時、壺に汲み神前に供えし 人の真心を供へて一年中の大願成就をする』とあり、これは「人間に大切な要素の根源は風、水、火の3つであり、それを清浄にし、上手に使い感謝する心を神に供えることが大切」ということから、風、水、火の3つの釜を使うのだとか。

沼田神社 湯立て祭

 「タン、タタン、タタン」と太鼓の音が静かに鳴り続ける中、まずは御神火(ごじんか)を移して風・水・火の意味がある釜に火をかけ、たっぷりの湯を沸かします。釜の蓋を開けるともくもくと湯気が立ち上がり、煮えたぎった様子がよく伝わります。その湯気に包まれる様に御神刀を掲げて祓いの儀を行ったあと、風・水・火、それぞれの釜の湯を神前に供えます。その後、釜の湯を笹の葉につけ、湯を参拝者にふりかけます。この湯しぶきを浴びると無病息災に過ごせるとされ、釜の湯を持ち帰って飲むと、1年は風邪をひかないと言われています。

沼田神社 湯立て祭

祭りが終わると釜の湯で入れたお茶やコーヒーを飲む人、ポットに詰めて持ち帰る人などでワイワイと賑わい、近所のいこいの場にもなっています。祭りには地元の人だけでなく、市外からカメラを持って見学に来る人もいるそうです。「これからもこの行事を継承していきたい」と、地元の子どもたちを呼んで、湯立て祭でお菓子や抹茶のふるまいなどもしているそうです。 氏子の皆さんは「昔はここでお芝居やちんどんやなんかもあったよね」「映画を見たこともあったなぁ」と語られ、地域の思い出がつまった場所でもあります。

広報みはら2022年3月号「未来へつなぐ大切な祭」掲載

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西本ちか

西本ちか

コツコツ、マイペース

山口県岩国市出身。2005年に三原の旦那さんとこに嫁いで普段は着物屋の嫁をしております。好きなものは着物、漫画。最近の趣味は図書館で本の装丁を見ること、工芸に触れること

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