ウナ セラ ディ ロンド

音楽はおくりもの

矢野顕子の最新アルバムのタイトルであり、タイトルテューンでもある。
泣いたり笑ったりの、それぞれの人生に寄り添う 歌が、音楽がある、というメッセージを、MISIAとともに歌い上げる、名曲だ。

コロナ禍において、飲食店や演奏会場をはじめとするさまざまな場所が、不要不急の場所と位置付けられ、そのことは、美味しいものや、素晴らしい音楽を提供してきた人々にとって、単に仕事ができないということ以上の、辛い経験となった。

カフェロンドは、もともと演奏会場としての設備も整っていないし、小さな店なので、コロナ以前から積極的にライヴを行ってきたわけではないが、時折、ミュージシャンからお話をいただいて、ライヴをやっていただいてきた。

さて、コロナ禍で、ライヴを、どうしよう。

表現の場を失った素晴らしい表現者たちは、配信ライヴなど、柔軟に活動の場所を見いだしていたけれど、やっぱり、お客様の前で演奏することへの思いが強いことを感じ、なんとか、できる限りの感染対策をして、ライヴを行っていただいている。

もちろん、何度となく、延期、中止としなければならないものもあったが、比較的早い時期から、演奏会を再開した。

初めての演奏会は、三原出身のサクソフォン奏者 山下雅也さんと、ピアニスト 富永やよいさんのクラシックライヴ。

担当省庁が作った何十ページもある催し物を開催するためのガイダンスを読み、それを店の規模に合わせて変換して、オリジナルのガイドを作り、三人で話し合い、なんとか開催。

9席限定のミニミニコンサート。

はっきり言ってしまえば、客数が半分で、ミュージシャンは儲からない。
店だって、ドリンクのおかわりがバンバン売れるわけではないから儲からない。

それでも、

それでも、

あんなにやって良かったと思ったイベントは、ない。

久しぶりに人々の前で演奏できるという喜びに溢れた演奏者。

久しぶりに生の演奏を聴けたという気持ちを共有するお客様。

この体験は、まさに、音楽はおくりものであるということを実感する出来事だった。

この11月にも、福山を中心に活動されている シンガー Kimieさんと、ギタリスト 門田信さんが、Duoでライヴをしてくださった。

本当に素晴らしい演奏と歌に、お客様も感極まる場面が幾度となくやってきた。

演奏者の、みなさんに楽しんでいただける場所があることへの感謝と喜びの気持ちに包み込まれているかのようなライヴとなった。

少しずつ制限が解除され、より大きな場所にたくさんの人々が集い、自由に演奏を楽しむことができるようになり、カフェロンドとしては、一定の役割を終えようとしているのかもしれない。

矢野顕子の音楽はおくりものという曲を聴いていると、誰にでも、どんな時でも、そばにいてくれる音楽を享受できるということは、決して不要不急などではなく、特別な贈りものなのだと、しみじみかみしめる、ウナセラディ ロンドなのであった。

ウナ セラ ディ ロンド

店で流している音楽のこと、個展やライブのこと、
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ある夜のカフェロンドからお届けします。
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